~人真似には限界がある~
ベストプラクティスとは、 結果を得るのに最も効率のよい手法やプロセス、活動などを指します。通常は、他社研究から導かれます。
関連する言葉にベンチマーキングがあります。 これも、他社優良事例などから参考にできる点を学び、自社の活動に取り入れようとするものです。 ベンチプラクティスやベンチマークは多くの企業で用いられ、実際に成果も残しています。
しかし、安易にそれに頼っていては人真似になってしまい、 エッジの立った提供価値や、ユニークなビジネスモデルには結びつきません。 それが「ベストプラクティスに解はない」ということです。
これは、ベストプラクティスの以下の弱点に起因します。
1.未来志向ではない
どれだけすぐれたベストプラクティスも、所詮は過去の方法論です。安易にベストプラクティスに頼ることは、なまじ短期的な結果がともなうがゆえに、未来の変化に対する感性を弱め、組織から考える力を奪ってしまいかねないのです。
2.自社の強みを弱める可能性がある
どのような企業にも、その会社独自の強みがあります。それは、目に見えやすい工場などの有形資産だけではなく、「見えざる資産」も含みます。見えざる資産は伊丹敬之(いたみひろゆき)らが提唱した考え方で、ノウハウや顧客情報の蓄積、ブランド、プロセスなどが該当します。また、それと連動した組織文化や行動規 範なども含まれてきます。
安易に他社のやり方を模倣することは、こうした本来の強みと不整合を起こしたり、自社の強みを活用することへの執念を失わせる結果、それを弱体化させか ねないのです。
ここで伝えたいのは、ベストプラクティスが全く役に立たないということではありません。 些細な手順や方法論に関しては、ベストプラクティスの活用は非常に有効です。
ただ、ベストプラクティスからは、未来を勝ち抜くための骨太の戦略やビジネスモデルは決して生まれません。 自社の文脈を正しく理解したうえで、未来を意識し、自社ならではの「解」を粘り強く模索することこそが重要なのです。