真似できないものを 持っているか否かが重要だ
2017/06/12 Loading

~模倣困難であることが優位性の持続には有効~


保有している経営資源が勝っているために競争上優位に立てるというケースは少なくありません。 その中でも、競合が模倣できない。価値ある経営資源(ヒト、モノ、カネ、ノウハウ、ネットワークなど)を持つことが特に重要です。

たとえば、清涼飲料水ビジネスにおいては、自動販売機の数とその置かれた立地のよさが競争力にダイレクトに影響します。 これは、「飲みたい時が買いたい時」という商材の特性と、自動販売機での購入が30%を超えるという日本人の購買特性によるものです。 日本では、90万台に近い圧倒的な自動販売機数を誇ってきた日本コカ・コーラが、清涼飲料水業界では長年不動の1位の座を占めてきました。 もしライバルが容易に自動販売機を増やすことができるのであれば、この優位性は長続きしないはずです。 しかし実際には、サントリー食品がJTの26万台の自販機網を買収するのに総額1500億円を要したことからもわかるように (厳密には「桃の天然水」などのブランド買収額も含まれます)、自販機の台数はそう簡単に増やせるものではありません。 だからこそ、日本コカ・コーラの天下が続いてきたのです。

模倣が難しくなるケースにはさまざまなものがあります。 上記の例は、巨額ではあるものの、お金で買えるものでした。特定の商品ブランドなどもその例です。 一方で、お金で買うことも難しく、容易には模倣できないものとして、下記のようなものがあります。 これは、資源ベースの競争論(RBV:リソース・ベースド・ビュー)の中心人物であるジェイ・B・バーニー教授が提唱したものです。


1.独自の歴史的な条件
例:日本郵政やかんぽの持つ経営資源、ネットワークは、総務省(旧郵政省)の政策による部分が大きく、競合は簡単にはそれを真似できません。

2.因果関係のわかりにくさ
例:日本の製造業の強みである擦り合わせの技術(パーツと機能が一対一対応しておらず、細かな調整が必要な技術)などは、因果関係が外からはわかりにくいため、模倣は容易ではありません。

3.組織面の複雑さ
例:家電製品などは、リバースエンジニアリングでかなり詳細な分析ができますが、それを生み出した組織の文化・風土や、サプライヤーや顧客とのやり取りなどは、複雑でわかりにくく、真似しにくくなります。


こうした事例からもわかるように、 ハード(モノ)そのものに比べ、組織やノウハウといったソフトな部分の方が、通常は模倣が難しいとされています。

そのほかにも、戦略論ではあまり前面に出しては語られませんが、 カリスマ的なリーダーや立地なども競合が真似しにくい要素といえます。

前者についていえば、たとえば2000年代のアップルの強さは、 スティーブ・ジョブズ抜きには語れません。京セラの長年にわたる繁栄もやはり稲盛和夫氏あってこそといえるでしょう。

後者の立地については、たまたま歴史的な偶然で好立地を手にいれることができたというケースも多いものです。 たとえば青山学院大学は、若者の大好きな街である渋谷に隣接していることから、 学生集めなどで大きなアドバンテージを持っています。渋谷と表参道の間にある広々とした好立地をいまから他の大学が 手にいれることは現実的にほぼ不可能であり、模倣困難性もきわめて高くなっているのです。


ワンモア・アドバイス
資源ベースの競争論は、 シンプルにいえば、いい経営資源を持っている方が勝ちやすいという考え方です。
これに対し、本章でも何回も登場するマイケル・ポーター教授らは、 魅力的な市場を選び、そこでいい位置取り(ポジショニング)を実現できれば勝てると考えます。
これは、どちらか一方だけが正しいわけではなく、お互いに補完し合っていると考えてください。 言い換えると、いい資源を持ち、かつ市場でいい位置取りができれば、 企業の競争優位性は格段に実現されやすくなるのです。直観的にも理解しやすい考え方といえるでしょう。