スカイツリーの頂上から 飛び降りた時のリスクはゼロ
2017/07/19 Loading

~ファイナンスでのリスクの意味合いは日常用語と異なる~


ファイナンスでは、リスクという言葉を日常用語とは異なる「不確実性」「(統計上の)バラつき」といった意味で用います。 そのイメージを端的に示す言葉が冒頭のもので、私が昔から使ってきたものです。

一般の方に「スカイツリーの頂上から飛び降りた時のリターンとリスクはどのくらいでしょう」という質問をしたらどのような答えが返ってくるでしょうか。

おそらく、「リターンなんてありえない。リスクはものすごく高くて、間違いなく死んでしまうだろう」といった答えが返ってくるでしょう。 リターンという言葉は得られそうなメリットを指し、リスクという言葉は危険性を指すのが一般的な用法だからです。

 

 

しかし、ファイナンスでは全く異なる考え方をします。リターンはマイナスプラスに関係なく得られる結果であり、リスクは統計的なバラつきを指します。 この考え方を用いると、スカイツリーの頂上から飛び降りた時のリターンは、007やルパン三世でもない限り、通常人の場合は「死」であり、そのリターンに関しては バラつきがないため、リスクはゼロになるのです。それを示したのが図23の左側です。

一方、図23の右側は、3階建てのビルから飛び降りた時のリターンとリスクを示しています。常識的に考えると、かなりの重傷を負うというのが最もありそうなパターンです。 ただし、このケースでは、運がよければ無傷ですむというケースもあるでしょう。その逆に、打ち所が悪く、死にいたるケースもありそうです。 結果に無傷から死までのバラつきが生じる、つまり、かなりリスクは大きくなるのです。

「スカイツリーの頂上から飛び降りた時のリスクはゼロ。一方、3階建てのビルから飛び降りた時のリスクはかなり大きい」 と聞いたら、多くの人は強く違和感を抱くはずです。しかし、それこそがファイナンスでいうリスクの考え方であることはしっかり認識してください。

 

ワンモア・アドバイス


ファイナンスでは、株式のリスクを非常に重視します(ちなみに、国債をリスクゼロの資産と考えます)。 それによってその企業の資金調達コスト(WACC)が変わり、割引率も変化するからです。

個別の株式のリスクの工程は、βという指標で表されます。 これは日経平均などの値動き以上に株価が動きやすいか否かという指標です。 通常はある期間をとって図24のようにプロットし、回帰線を引きます。この例では、傾きが1以下ですから、 日経平均よりも値動きは穏やかであり、比較的リスクの低い株式であるということがいえます。

βが低くなるケースとしては、売上が景気や為替に左右されにくいガスなどの内需系公共サービスや、 生活必需品ともいえる食品業界や医薬品業界などがあります。

また、規制が強く、強い代謝財もあまりない運輸業界なども売上は安定しているためβは低くなる傾向があります。